021:初夏、散歩をしながらこの一か月を振り返る
「TSUTAYAに行こう」
そう言ってドアを開け、家を出た
*
思い返せば、初夏という季節は
高校一年からずっと忙しかった
いつまでどこまでなんて 正常か異常かなんて
考える暇も無い程 歩くのは大変だ
(BUMP OF CHICKEN「ray」より)
メインメインか、アカキャンか
汗のにおいか、紙のにおいか
それくらいの違いしかないな、と
*
景色はするする過ぎてゆく
口を開ければ
肺が自然と膨らむ
川は在り続けるけど、同じ水は二度と見ない
数年たてば、全身の細胞が入れ替わる
中学に入学したあの四月
あれからちょうど十年
僕は僕であって、僕は僕でない
*
手を伸ばせば
それとの距離がよく分かる
ときに空を切るが
手には残り香があったりして
その記憶を頼りに
輪郭を描こうと足掻いたりする
うーんと考える
引っかかっているその思いを
形にしようと試みる
ペンを滑らせ、文字にしてゆく
*
本を開けば
あるノルウェー人と出逢える
何を言っているのかと
頭を傾げる
ただ注意深く耳を澄ましてみれば
思考が、ミシミシ音を立てて啓いていく
糸が、スルスルと解きほぐれていく
でもほぐれないで残っているのもあったりする
その刹那に遭遇してしまえば
もう後ろには下がれない
あのソワソワとモヤモヤを忘れないでほしい
僕が一回生のときに四回生だった先輩が僕にマイクを振ったように
三年後、君らの誰かに話を振れたりしたらやっぱり感慨深いんだろうな、と
*
あの夜、地面が大きく揺れた
携帯端末が断続的に叫んだ
津波よりも大きなカタマリとなって
不安が押し寄せてきた
歩きながら
平穏な別府のまちなかを通り抜けながら
そのときのことをふと思い出した
でも同時に思い出す
「どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんの可哀想なロボットを動かしても、土から離れては生きられないのよ」
「天土の間にあるものを欲するは、人の業というものだ」
僕は、シータに糾弾されるムスカだったのかもしれないし、
僕は、アシタカに屁理屈こねるジコ坊だったのかもしれない
*
より良い社会、より良い未来
そのあり方を考えていくとき
肌を撫でる風のこと、足もとにある大地のこと
並走する川のこと、遠くで騒いでいる木々のこと
それらと人間の関係を考えるということ
それを抜きにしてはならない
今までの勉強は無駄ではなかった
そしてこれからの方針は間違っていない
そう再確認した
そんな一か月だった
*
五月末には気仙沼に行く
夏から秋にかけて院試がある
どんな卒業論文が書けるか
自分でも楽しみである
2016年5月8日(日)、アカキャン成果発表会の合間に
*
ちなみにTSUTAYAで借りたのは
劇場で見逃した『STAR WARS : FORCE AWAKENS』
May the Force be with you all...